腎臓は尿の排出だけではなく、健康に対してさまざまな影響をもっています。そのため、腎臓が悪いと頻尿、むくみ、血尿などの悪い症状がでてしまいます。
腎臓の働きを回復させるためには、食事や運動など普段の生活習慣の見直しがとても大切です。今回は腎機能が低下しないように予防する方法、腎臓に良い食べ物や悪い食べ物を紹介します。
目次
塩分を制限
塩分の摂りすぎは腎臓への負担が大きくなります。1日に6g以下を目安にしましょう。 塩分を控えるコツとしては、ハムやベーコン、インスタント食品などの加工食品を控えたり、 しょうゆや塩を使うところはなるべくダシや香味野菜、ゴマなどで代用しましょう。
塩分を制限するときには、コンビニやファーストフードを中心とした外食にも注意が必要です。これらの食品中には、塩分が多く含まれ、栄養バランスもよくないため腎臓に負担をかけます。できるだけ、自宅で塩分を控えた食事をとるようにしてください。
たんぱく質の制限
タンパク質は糖質や脂質と違って分解されると7~8割は老廃物となり腎臓が処理するために負担がかかります。とはいえ、タンパク質は人体を形成するために大切な栄養素です。 腎臓に負担がかかるからと言って、やみくもにたんぱく質を少なくするだけでは、かえって腎臓の修復ができなくなってしまいます。
タンパク質を摂りすぎることを注意するのはもちろんですが、良質のタンパク質を適切に摂ることが最も重要なことです。良質なタンパク質とは人体で作ることができない9種類のタンパク質をバランスよく含んでいる食品です。例えば、肉、卵、魚、牛乳などが良質なタンパク質です。この良質なタンパク質を含む食品の場合は、毒素になる割合が少ないので腎臓に負担をかけません。
とはいっても、食事はバランスよく食べることが大切なのでこればかりを食べるわけにはいきませんが積極的に摂取したい食べ物として覚えておいてください。
追記参照:
日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」においてeGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、たんぱく質制限の必要なしとされました。
日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン
アミノ酸スコアの高い食品
アミノ酸スコアとは、アミノ酸の構成バランスを示しています。アミノ酸スコアが100に近いほど栄養価の優れた食品といえます。
食品 | アミノ酸スコア |
---|---|
牛肉 | 100 |
豚肉 | 100 |
鶏卵 | 100 |
牛乳 | 100 |
アジ | 100 |
イワシ | 100 |
サケ | 100 |
マグロ | 100 |
カツオ | 100 |
生クリーム | 100 |
ヨーグルト | 100 |
枝豆 | 92 |
おから | 91 |
大豆 | 86 |
睡眠や運動
生活習慣病には、休養が大切です。気分転換や疲労回復に睡眠や運動をしましょう。ただし、腎機能がすでに低下している方は激しい運動は逆効果になってしまいます。
激しい運動は、尿素などの疲労物質を発生させますが、腎臓がこれらの疲労物質もろ過するので腎臓に負担がかかります。運動をする場合は、体に過度の負担がかからないウォーキングなどの軽い運動をするようにしてください。
飲酒・喫煙
腎臓の機能が低下している場合、適度な飲酒はかまいませんが過度の飲酒は避けたほうがいいでしょう。血中にアルコールが混ざると、血液が粘性をもったいわゆる「ドロドロ」状態になり、「尿酸値」が高くなります。
喫煙は腎臓病の発症にも影響します。1日に20本以上タバコを吸う人は吸わない人に比べ腎不全になる割合が2.3倍といわれています。喫煙で慢性腎臓病の人はタンパク尿が増加し病気が悪化するのでできるだけ禁煙することが大切です。
過労やストレス
腎臓だけでなく過労やストレスは健康状態を悪くします。腎臓の働きの一つに血液をろ過する機能がありますが、過労やストレスで活性酸素が増えると血液がドロドロになってしまうので、その分腎臓の負担が増えて腎機能が低下してしまいます。
腎機能の改善
軽度の腎機能の低下なら早期に発見し早期に治療することで低下を防ぐことができますが、慢性腎臓病になってしまうと機能が低下した腎臓は元に戻らなくなってしまいます。
腎臓がやっかいなのは、自覚症状がわかりにくく腎機能が低下していると思う人が少ないということです。
腎臓の疾患は健康診断で見つかることがほとんどなので、会社の健康診断、自営の人は市区町村で行っている健康診断をできるだけ受けるようにして早期に異常を発見するようにしましょう。
腎機能低下の時の注意すべき薬
腎臓の低下時に気を付けたいのが薬の服用です。薬の中には腎臓で代謝されるものがあるので、そのような薬は腎機能低下時には悪化する可能性があるので避けなければなりません。
マグネシウム・アルミニウムを含む薬
下剤や胃腸薬にマグネシウムやアルミニウムが入っている場合があり、これらが体内に蓄積されると腎機能の病状が悪化する場合があります。
非ステロイド性消炎鎮痛剤
鎮痛剤、風邪薬に入っている場合があり、腎機能障害を悪化させる恐れがあります。腎臓の疾患で医療機関を受診しているなら主治医に確認したり、検査で腎機能が低下していると分けっている場合にはできるだけ使わない方がいいでしょう。
造影剤
CTやMRI、血管造影などで使用されます。腎臓で代謝されるので腎臓が弱っている場合体内に蓄積していしまいます。初診で医療機関に行く場合などは自己申告した方がいいでしょう。
抗生物質
抗生物質のなかでもアミノグリコシド系抗生物質は、急性腎不全の原因となる場合があるので、腎機能に合わせた量を投薬してもらう必要があります。抗生物質は腎臓で代謝されるためできれば避けた方がいい薬です。
腎臓の働きを改善する食べ物・成分
腎機能が低下しているときに食事でなんとかしようと思えば、腎臓にいい食べ物を積極的に摂って改善していくのがいいでしょう。
腎臓に良い食べ物でよく問題になるのが、カリウムの扱いです。カリウムは、腎臓病が重くなってくると尿中に排出することができなくなってくるので制限をされることがあります。
そのため、カリウムの摂取を控えるようにする場合もあります。腎臓病ではなく腎臓の機能が少し低下しているぐらいであれば、塩分を排出する作用があるのでカリウムは積極的に摂った方がいいでしょう。
ただし以下の食品は、特に腎臓に病気があるわけではないが、健康診断の数値を改善したい腎臓を労わりたい人向けです。現在すでに腎臓に病気がある人は食事の内容を医師から伝えられていると思いますので、そちらを守るようにしてください。
しじみ
腎臓にはオルニチンというアミノ酸の一種が含まれています。このオルニチンには尿素回路でアンモニアを解毒、不純物をろ過する働きを助けてくれるので、腎臓障害の改善や腎機能アップに良いといわれています。
スイカ
スイカは水分が多く含まれている上にカリウムも豊富に含まれているので腎臓の機能をサポートします。また、「シトルリン」という成分が、他のアミノ酸と体内で発生してしまうアンモニアを無害にして体外へ排泄する作用があります。
その他の腎臓にいい食べ物
腎臓にいいと言われている食べ物は、他にも海藻類、豆類、ゴマ、キャベツ、ほうれん草、ハト麦などがあります。 これらの食べ物は、基本的にカリウムが多く含まれ尿の排出をよくするものです。
ただし、腎機能がかなり悪い人にとってはカリウムが蓄積されてしまい逆に悪い食べ物になってしまうので、自分の腎臓の状態に関しては十分に注意してください。
腎臓に良い食べ物の用意が難しければサプリでもOK
腎臓によい成分としては、アミノ酸であるオルニチンやシトルリンが有名です。これらの成分は、しじみやスイカなどの一部の食べ物に含まれています。
とはいえ、オルニチンを毎日摂取しようと思ったらしじみを頻繁に購入して味噌汁などを作らなければならず、手間がかかるのと飽きてしまうとなかなか続かないのではないでしょうか?
そんな場合は、サプリメントでオルニチンやシトルリンを摂取して腎臓の機能を回復させるのも一つの方法です。腎機能を改善してくれる成分を配合しているサプリを試して、次の健康診断では家族を安心させましょう。
追記:腎機能低下時のタンパク質制限について
腎臓機能低下時にタンパク質を制限すべきかどうかという議論がありましたが、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2013」においてeGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、たんぱく質制限の必要なしとされました。
腎機能の低下および軽度の腎臓病ではタンパク質は特に制限する必要はないということです。eGFRは通常の健康診断でも行いますのでその数値を参考にしてください。
タンパク質制限に関しては、従来から医師の中でも見解がわかれていて、制限をした方がいいという人と良質のタンパク質なら構わないなど見解が統一されていなかったので、これで一定の指針ができてよかったと思います。